山移 玲
Senior Manager, Global Communications / Tokyo
Corporate

より円滑なコミュニケーションの実現を目指して、通訳/翻訳の枠を超える

大学卒業後入社した会社での思いがけない出来事から、日英の通訳/翻訳のプロフェッショナルとしてキャリアの道に進むことを選択。現在はスマートニュースではSenior Manager of Global Communicationsとして社内コミュニケーションの円滑化を牽引。Culture Groupの一員として、企業文化醸成にも携わる。

スマートニュースにはいつ入社されたんですか?

2018年9月に入社しました。現在スマートニュースのプロダクト責任者を務めているジーニー・ヤンという女性がUS officeにいるのですが、彼女のために通訳をすることが私の役割のひとつだったので、ジーニーと同じ時期に入社することになりました。

入社するにあたって、この会社でどのようなことを成し遂げようと目標を設定されていましたか?

私には入社当初から、通訳/翻訳の仕事を通してインターナルコミュニケーションを総合的にサポートしたいという思いがありました。ですから会議の通訳やドキュメントの翻訳といった業務だけでなく、言語的な問題があったらそれらを全部拾って解決したいという気持ちでした。例えば近隣チームに「何か困っていることはありませんか?」と定期的にヒアリングを行ってアンテナを張るように、通訳/翻訳チームというのはプロアクティブなチームであると今も考えています。

山移さんが入社された時には既に通訳/翻訳チームは社内にあったんですか?

いえ、通訳/翻訳に携わる社員としては私が1人目の入社だったので、まだ何もない状態でした。ありがたいことに入社当初から「待ってました!」みたいな感じでニーズがすごく多く、現在はチームも7人まで成長していますが、通訳スタッフがブッキングできないことで会議のスケジュールを私たちに合わせてもらわないといけないくらい、需要と供給のバランスが合わなくなってしまっています。これはもうイタチごっこのようなものですが、会社のスケールするスピードに私のチームのスケールが追いついていませんね。現在7人のチームですが、2021年末までには10人くらいになる予定です。

チームの拡大はまさに急務だと思いますが、その中でもどのような人材を求められていますか?

会社のミッションに共感でき、社員一人ひとりに対して愛情を持ちながら、言語や良質なコミュニケーションというものに強いこだわりを持つことのできる人が求められています。現在のチームもそうした職人肌のメンバーが多いですね。単に英語が上手とか日本語が上手というだけではなく、勘の鋭さも必要ですし、通訳者のタイプで言うなら「Last in first out」ではなく「First in first out」のように、聞きながらすぐに吐き出せる人でないといけません。今後も様々なバックグラウンドの人材が増えていくので、グローバルに成長していく会社で挑戦しいきたいと思っていらっしゃる方は是非お会いしたいです!

そうした高度な働きが求められる仕事の中で、山移さんはどんな時にやりがいや喜びを感じますか?

これは最初にお話ししたジーニー (VP of Product) とポール (VP of Engineering) が参加している会議で、二人以外のメンバー全員が日本語しか話せないということがありました。そこでの通訳を終えた後、ポールから直接DMで「本当に感動しました。噂は聞いていましたが、あなたの通訳は僕の想像をはるかに超えていました」と言ってもらえたことは今でも覚えています。役に立てたこともやりがいとして感じられましたし、ポールのように完璧なバイリンガルの人に褒めてもらうのはやはり嬉しいものでした。スマートニュースは今後ますますグローバルで成長していくと思っています。日常の業務の中で、コミュニケーションは大きなインパクトがあると思っています。社内からこのような声をもらえるとやはり嬉しいですし、会社のミッションに貢献できていると感じます。

ここからは山移さんのこれまでのキャリアについて聞かせてください。そもそもどんな理由から英語に興味を持たれたんですか?

私は3~14歳までは父の仕事の関係でアメリカのニューヨーク州に住んでいたので、中学2年生で日本に帰って来た時はむしろ英語の方が母国語であり、日本語はカタコトのような状態でした。どうにか区立の普通の中学校に入ることができました。当時は帰国子女があまり多くなかったということもあってみんなに珍しがられて、そこで「日本人として英語が話せるってすごい強みなんだ」と知ることができました。

帰国後も英語の勉強は続けられていたんですか?

もちろんアメリカでの英語は中学2年生までで終わってしまっていたので、まずは大学卒業レベルと言われている英検1級の取得を目指して、帰国子女向けの塾を自分で探しました。結局英検1級は高校1年か2年の時に取得できたのですが、そのことで英語という言語自体をすごく楽しく思えるようになりました。

新卒として入社した仕事も英語関係を選ばれたんですか?

いえ、元々IT系というかパソコンを使うことも好きだったので、新卒で入った富士通という会社ではSEとして働いていました。一応「英語が話せるSE」という感じでしたけど、通訳/翻訳とは関係ないものでしたね。

そこから現在の仕事へと繋がる転機はいつ訪れたんですか?

SEとして働いていたある日、150人くらいが集まる国際的なカンファレンスに参加したのがきっかけになりました。そこに外注として来られていた通訳さんが体調を崩してしまい退出されるということがあり、上司から「君、新人だけど英語を話せるんだよね?」と言われたことで、いきなり初めての逐次通訳をすることになりました。なんとか通訳できたことで、富士通の社員の方々にも、英語しか話せない方々にもすごく感謝してもらえた時に「私、人の役に立ってる」と思えたことが転機だったのかもしれません。人間は誰かの役に立つことで幸せを感じることができるという話を聞いたことがあったのですが、初めてそれを感じた瞬間でした。
そこから通訳を目指すようになったことで富士通を辞め、次にディレクTVという会社で働きました。そこでさらに「スタートアップってすごく面白いかも」という気持ちも芽生え、そのことから、その後にフリーランスを経て前職のLINE株式会社に入社しました。LINE入社当時の通訳/翻訳チームは私を含めて2人のチームでしたが、在籍した3年半で7人まで増やすことができました。海外オフィスと日本オフィスのコミュニケーションのハードルを取り除き、円滑な連携ができるようにでしたらい、文化の橋渡し的な役割にもやりがいを感じていました。これら経験を通じ徐々に日本のサービスで海外展開を視野に入れている会社でもっと貢献がしたいと思うようになりました。そのことたまたまスマートニュースの方から「海外のオフィスを拡大していくので、通訳/翻訳チームを立ち上げたい」という話を聞いたので、「それ、私にやらせてもらえませんか?」と自分から売り込みました。

通訳/翻訳チームの他にメンバーとして参加されているカルチャーグループとはどういった組織なんですか?

USの初期メンバーが2020年1月に立ち上げた組織で、「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というスマートニュースのミッションと、その下にある「For the Common Good」「Be the Owner」「Have Appreciation」という3つのコアバリューについての理解と浸透を促し、社内全体のアライメントを図ることを主な目的としています。

どういった理由から発足されたのでしょうか?

元々は小規模な会社だったスマートニュースがこの2年くらいで急成長を遂げたその過程で、ミッションへの認識や理解のずれが従業員間で生まれてしまったことを経営陣が課題として感じ始め、アライメントとエンゲージメントという2つの軸に対してオーナーシップを持つ部署を作ろうということからカルチャーグループは誕生しました。

日常的にはどのような業務にあたられているんですか?

ミッションやコアバリューを伝えていくわけですが、色々な取り組みをしています。例えばコアファイブという5つの施策に取り組んだりしています。1つ目の「GAH(Global All Hands)」は、各部署が現在何をやっているのかを説明するために毎月オンラインで開いている全社集会です。2つ目の「WWD(What We Do)」は、各部門とそれぞれのピラー(Pillar)がミッションに対してやっていることを全社に向けてプレゼンする半年に一度の機会です。3つ目の「News Letter」は、各オフィスや各スタッフの人間味溢れるストーリーを取材して載せている隔月発行の社内報です。4つ目の「Donuts」は、Slackの同名チャンネルにいる人たちをランダムでペアリングした上で、15分なり30分なりハングアウトで会話をしてもらうためのSlack上のアプリです。これはコロナ禍でリモートワークがベースになった時に始めた施策で、それまでスマートニュースがものすごく大事にしていた偶然の出会いやそこでの会話から生まれるイノベーションをSlack上でも生み出すための仕組みとして導入しました。5つ目の「Unipos」は、日頃お世話になっている社員への感謝をポイントとして可視化する、いわゆるPeer Reward(同僚への報酬)と呼ばれるシステムです。これらが現在取り組んでいるコアファイブという5つの施策ですね。
社内に通訳/翻訳チームがいること自体かなり珍しいですから、そのことからもスマートニュースがどれだけ言語の壁を取り除こうとしているかというグローバル化への覚悟を分かってもらえると思います。カルチャーグループもまさに、人と人とのコミュニケーションなくして生まれるものではない「Have Appreciation(感謝の気持ち)」というコアバリューに則ったもので、入社やオンボーディングを担当している部署とも密に連携を取ることができていますから、新たなスタッフがどの国で働きどんな言語を話す人だとしても手厚く迎え入れられるように日々工夫をしています。

Books

おすすめの本を通して人を知る

情報を可視化することがいかに重要であるか

もう4回くらい読み直しています。線を引いたり折り目をつけたりしながら…、恥ずかしいですけど(笑)。この本には情報を可視化することがいかに重要であるかということが書かれていて、初めて読んだのはちょうどカルチャーグループを始めた頃でした。会社がどんどんスケールしていく中で情報が属人化し始めていたことへの危機感を私だけでなく他の社員たちも持っていることを知り、職場の雰囲気や社員の満足度、エンゲージメントや会社に対する好感度みたいなものに対してオープンネスが与える影響について、そうした問題に詳しくなかったことから勉強してみようと思ったのがきっかけです。例えばデータを示した上で「職場の空気をオープンに感じれば感じるほど、その企業の成長の可能性は高くなる」と書かれていたり、「“いつでも相談して”と言いながら、忙しいリーダーのいる会社はオープンネスが低い」とか、「リーダーが成功体験ばかりシェアすると、みんながミスを隠すようになる」とか。つい納得してしまうようなことがたくさん書かれていて本当にオススメです。私のチーム運営がオープンになったのかは分かりませんが(笑)。

『OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める』

編者:北野唯我
出版社:ダイヤモンド社
出版年月:2019年11月

※2021.09.01時点の内容です