小越 崇広
Director of Product, Ads / Tokyo
Product

スマートニュース入社へのきっかけになったグローバルチームの魅力

イギリスへの語学留学を経験した大学時代を経て、株式会社サイバーエージェントに入社。在籍中は、自社メディア向けの広告配信プラットフォームの開発に責任者として従事した他、子会社2社の経営に取締役として関わる。2019年にスマートニュースに入社。以降はDirector of ProductとしてJP/US両リージョンの広告領域におけるプロダクト作りを牽引しています。

小越さんはどういった理由からスマートニュースに入社されたんですか?

大きなきっかけとなったのは、多様性のある会社で多様性のある開発チームを作りたいと思ったことでした。前職では自社メディアのマネタイズなど、ファーストパーティの広告プラットフォームを開発する仕事をしていましたが、そこで必要となる機械学習系のプロダクト作りにおいて日本語話者だけを中心にしたチームでは今後グローバルで戦うことは厳しいと感じたんです。そもそも採用対象になるようなエンジニアが少ない日本国内で、その中から優秀な人材を集めるためには競合他社に加えて国内大企業とも人材を取り合わなくてはいけない状況でした。これは当時聞いた話ですが、中国のあるテックカンパニーではエンジニアが千人いると言われた事があります。その時の私のチームでは同じ領域を担当しているのは一人でした。当時と同じやり方を継続するだけだと「これは少なくともスケールの意味では永遠に勝てなくないか?」と思いました。日本語話者にこだわらず、多様性のある採用をしていかないと規模で追いつくことは無理だなと感じたことを覚えています。

そうした経験から、グローバルでチーム作りをしているスマートニュースに興味を持ったということですね。

そうですね。もの作りの観点からももうひとつあって、私はテックジャイアントが確立しているように見える「千人でひとつのプロダクトを作る」事を可能にするようなモダンな方法論を身につけたいと思っていたのですが、スマートニュースはそれも実践していました。私が求めていた2つのことを備えていたのが本当にたまたまこの会社だったんです。

実際に入社されてみての印象はいかがでしたか?

まず、多様性という点では申し分ないですね。今では東京オフィスのエンジニアだと日本語話者の方が少ないほどですし、それに加えて私が入社した頃にはなかった中国にも採用拠点を構え、そこでは特に広告の分野で経験のある人材をどんどん採用できる環境が整っています。

プロダクト作りの方法論についてはいかがですか?

その点も期待通りですね。例えば、エンジニアリング部門のSVPが「ストラクチャード・インタビュー(構造化面接)」という世界標準の採用プロセスを、私のボスであり同じくSVPのジーニー・ヤンはスクワッド(Squad)モデルというチームの組み方を、と言った風に実際にモダンな方法論を経験した人達が世界基準のプラクティスをスマートニュースに直接持ち込んでいます。さらに最近では上海をベースとするチームからもベストプラクティスが学べるようになっています。当然、日本や北米よりも進んだ考え方もあり、その点でも充足されていますね。挙げるとキリが無いですが、多様なバックグラウンドを持つ人がその経験を還元していくのは素晴らしい事だと思います。

グローバルスタンダードな企業で働くことを目指す人にとってまさに理想的な職場ですね。

と言うほどには整っていないので、余り期待されると困りますが(笑)。方向性としてはグローバルに学びながら自分たちのやりたいことを作っていく、その完成されていない、ある程度の自由度を持った環境という面白みがありますね。特に今後1~2年くらいは、これから先のスマートニュースのスタンダードとなるような、後々振り返った時に「あれは歴史的に重要な年だったね」と言われるような年になると思います。基本的に自分が求めてるもの以外は何もないと思った方が良いので(笑)、生命力が強い人じゃないと生き残れないとは思うんですけどね。

Director of Productである小越さんにお聞きしたいのですが、スマートニュースにおけるプロダクトマネージャーとは具体的にどのような仕事をしているんですか?

それを説明するには最初にスマートニュースのもの作りにおける組織構成についてお話した方が分かりやすいと思います。我々にはまずピラー(Pillar)と呼ばれる基本単位があり、PillarはカンパニーレベルのOKRやKPIのオーナーとしてそれらを目標として持っています。グロースやマネタイゼーションといった事業テーマ毎にそれぞれのピラーが存在しています。それらの中にさらにスクワッド(Squad)と呼ばれる、特定のテーマに集中して問題解決するための小規模なチームがあります。このスクワッドを率いて課題解決にあたるのがプロダクトマネージャーの仕事ですね。私はマネタイゼーションを担当する「アズ・ピラー(Ads Pillar)」に属し、広告収益に対して責任を負いながら、短期的ではなく、長期的にどれくらいの収益を生み出せるのかといった売上目標に対して開発を行うとともに、将来拡大していくビジネスに対してスケーラビリティを担保する事もOKRとして設定しています。

小越さんがプロダクトマネージャーを務めているアズ・ピラーのスクワッドでは具体的にどういったレベルの課題解決に取り組んでいるのでしょうか?

例えば、ある特定の領域Aでの売上を最大化するとか、ある特定の領域Xの市場シェアをこれくらい獲得するとか、または機械学習のモデル性能をY%改善させるといった目標を持って活動しています。TO DOベースの仕事と言うよりは、「この市場にはチャンスがあるから1番になろう」とか「この問題を解決したら(メリットが)大きいよね。だから解決しよう」みたいなものですね。これらのテーマはスマートニュースの中期的なゴールから逆算して設定されるもので、その時マネタイゼーションはこうなっているべき、もしくはこうなっているはず、といった話の中から、そのために解かなければいけないものとしてテーマが設定され、それらに対してアズ・ピラーの各スクワッドが割り当てられるようなイメージです。ひとつのスクワッドがひとつの領域の課題解決にあたるのが原則ですが、プロダクトマネージャーは人手不足の場合2~3個のスクワッドを兼務する場合もあります。

中期的なゴールとお話されましたが、具体的にはどのくらい先を見据えていますか?

ロードマップ的に言うと2年後くらいまでを考えるようにしていますが、短いものだと次のクォーターくらい、標準的には半年後に影響を与えるような話をしています。

プロダクトマネージャーとしての仕事で、小越さんが一番こだわりを持っている点を教えてください。

一番はやはりスケーラビリティかなと思っています。と言うのも、解決した方が良い課題って無限にあるんですよね。それぞれの課題を解決することによって喜ぶ人たちってそれぞれに絶対いるんです。それを前提とした上で、他社に比べるとそこまで潤沢なリソースを持っているわけではない、どちらかと言うとチャレンジャーの立場である私達にとって一番重要なのは、将来を考えた時に最もスケールする課題を選択することだと思っています。

アズ・ピラーにおけるスケーラビリティとは、端的に考えると広告売上の最大化を意味するものですよね。そこにはクオリティを担保するためのルールなどもあるかと思います。スケールさせていく上で、そうしたルールとのバランスを取る重要性はどのように考えていますか?

広告売上の最大化というのは長期的に見るとすごく簡単に表す事ができる課題なんです。なぜならユーザーにとってより価値のある情報であればあるほど広告のパフォーマンスも上がるわけですから、その方向を目指して機械学習のアルゴリズムをアップデートしたり、広告主の数を増やしたり、クリエイティブの数を増やしたり、最適なフォーマットを開発したりと、やるべきことをやれば良いわけですからね。しかし、短期的な事業インパクトだけ考えると取れる選択肢というのはもっとあります。それらは短期的にはパフォーマンスを3倍にするかもしれませんが、長期的な方向性との矛盾を生じさせてしまったり、さらには長期的なパフォーマンスを毀損させてしまうものですから、そうした誘惑が常にある中で、取捨選択することが重要だと思っています。

そうした取捨選択をしていく上で、その判断基準にも「スマートニュースらしさ」を感じることはありますか?例えば「これも長期的な毀損と考えるのか?」というようなことです。

判断基準というわけではないですが、みんなが広告に対して関心のある会社だなと思うことはよくあります。どんな広告が出ているのか、それによってユーザーからどんなフィードバックが来ているのか、その上で「こういう見せ方はどうなんだろう?そもそもベースとなるユーザー体験とはどんなものだったか?」みたいな議論が活発にされていて、それが「スマートニュースらしさ」なのかもしれませんね。

小越さんから見て、スマートニュースで働くスタッフに共通する人柄や働き方というものはありますか?

会社全体に共通するカルチャーとしては、ミッションドリブンということですかね。これはそのカルチャーを象徴する話だと思っているのですが、2020年前半のCOVID-19に関する情報が少なく世の中が漠然とした不安に苛まれていた時に、CEO鈴木健が「我々は良質な情報を人々に届ける会社。だから正しい情報の提供にコミットするんだ」と宣言したことがありました。それに前後して我々は実際に新型コロナワクチンチャンネルをはじめとする色々なプロダクトを出していったわけですが、その時も例えば「いや、そんなことより広告利益を守らないと会社が潰れるぞ」みたいに言うスタッフはいなかったんです。それはきっと、世界が混乱の最中にある時に何をすべきかを考えた結果、「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というスマートニュースのミッションに立ち戻ったからだと思います。しかも実際に提供できたわけですから、このことは根底がミッションドリブンであることを象徴しているのかなと思っています。

良質な情報というのは重要なキーワードですね。小越さんは自身の仕事を通じて、良質な情報を届けるためにどのような責任を負っていると考えていますか?

良質な情報を届ける、つまり我々のミッションを遂行するために、広告がその経済的な下支えを担っていると考えています。情報って無料ではないんですよね。ある大手新聞社を例にするなら、その会社には一万人を超える社員の方が在籍しています。莫大なコストをかけて日々ものすごい量の情報コンテンツを、しかも高い品質で作られていますが、そうした情報は本来月額課金のように制作コストに見合ったお金を払って読むものです。課金以外の手段でコンテンツに対する収益機会を増やしてより多くの人に届ける事を可能にすること、それが広告だと思っています。一方で、広告それ自体もまた良質な情報であると考えることができるのではないかと思います。例えば「~の近所に蕎麦屋さんがオープンしました」という広告も世界のどこかの誰かにとっては知りたい情報となるわけですから。そうした広告メッセージを発信してくれる主体を増やすこと、それを効果的なコミュニケーションに変えていくこともまた私が担っていることかなと思います。

Books

おすすめの本を通して人を知る

インターネット業界に入るきっかけをくれた本

私が学生だった1990年後半から2000年はちょうど世の中で『IT革命』が騒がれていた頃でしたが、その実態をよく分かってはいませんでした。そんな当時、元々好きで著作を読んでいた小説家の村上龍さんが編集長をやられていたメールマガジン『JMM(ジャパン・メール・メディア)』を知ったんです。そのJMMの単行本である『IT革命のリアリティ』を読むことで、はじめて世界が変わっていくという実感を持つことができました。そして「世の中が変わる時に、変わっていくのを眺める側より自分は変える側になりたい」と思い、インターネット業界に入ることを決意しました。本の内容は彼の小説とはまったく違うテイストで、様々な分野の第一線で活躍されている人を招いて世の中で今起きていることの本質について村上さんが聞いていくというものでした。この本の対談の中である方が言っていた事が印象に残っています。当時利益を出そうと思えばいくらでも出せたにも関わらず赤字のままでひたすら「価値を作ること」を優先していたAmazonを例に出し、「(IT革命において)価値は利益に優先される」という話をされていました。果たして現在のAmazonが作り上げた価値を考えればまさしく本質的だったわけですよね。それ以外にもインターネットによって下げられたコミュニケーションコストについての話など、どれも当時としてはすごく画期的でしたし衝撃を受けたことを覚えています。

『JMM〈VOL.7〉IT革命のリアリティ―「価値」は「利益」に優先する』

編者:村上龍
出版社:NHK出版
出版年月:2000年6月

※2021.09.01時点の内容です