Gwendolyn (Wendy) Bounds (ウェンディ・バウンズ)
VP Content & U.S. Media Partnerships / US
Business

テクノロジーと人間の良心の融合で、良質な情報を送り届ける

米国ノースカロライナ大学を卒業後、ウォール・ストリート・ジャーナル紙でキャリアをスタートし、20年間さまざまな業界を取材。その後コンシューマー・リポート社の副社長兼チーフ・コンテンツ・オフィサーに就任し、現在はスマートニュースのコンテンツおよび米国メディア・パートナーシップ担当副社長を務める。また、障害物競走の世界選手権に出場した経験を持ち、著書『Not Too Late』ではそれまでの道のりについてつづっている。

ジャーナリズムの世界に入ったきっかけは何でしたか?

ある意味、私の血にはインクが流れています。大叔父がみなジャーナリズム関係者だったので、遺伝的なものもあるかもしれません。大学はノースカロライナ大学チャペルヒル校に進み、ジャーナリズムを学びました。21歳で卒業し、ペンシルベニア州ピッツバーグのウォール・ストリート・ジャーナルに就職しました。そこで記者、編集者、ビデオプロデューサー兼司会者として20年間働き、1996年にニューヨークに移り、ファッションと小売業界を担当しました。その後、デジタルメディアに移行し、ビデオニュースやライフスタイル番組の司会と制作を担当しました。それ以来、ニューヨーク近郊に住まいを移し、ABCニュースやCNBCなどのテレビネットワークの仕事に携わってきました。

キャリアをスタートさせた90年代初頭に比べて、この業界はどのように変わったと思いますか?

1993年当時のインターネットは今のようなものではなく、新聞や雑誌などの印刷物がメインの情報流通手段でしたが、ウォール・ストリート・ジャーナルは、デジタルメディアが軌道に乗ったときに、いち早くオンライン空間でのプレゼンスを確立した新聞社のひとつでした。私は紙からデジタル、ビデオ、SNSへとメディアが進化していくのを経験し、デジタルに反発するのではなく、これらの変化を受け入れるという立ち位置にいます。

私は自分のことをライターだと思っていますし、文字媒体が好きですが、すべてのメディアを尊重しています。これから起こる変化に対しても常に前向きな気持ちでいますよ。

ウォール・ストリート・ジャーナルやコンシューマー・リポートでの約20年に及ぶキャリアを経てスマートニュースに来られましたが、テック企業への転身のきっかけは何でしたか?

現在スマートニュースの顧問を務めるリッチ・ジャロスロフスキーが私に話を持ちかけてきました。彼もかつてウォール・ストリート・ジャーナル紙で働いており、私たちはそこで知り合いました。彼に紹介された何人かの人と話したり、ミッションについて目にしたり、インタビューを受けたりしているうちに、スマートニュースの企業文化や創業者たちのビジョンに惹かれていきました。

しかし何よりも大きなきっかけは、情報がネット上に偏在するようになり、人々が必要とする良質な情報を見つけるためには、それを選別するためのテクノロジーが必要だと私自身が感じ始めていたことです。従来のメディア企業ではこの問題を解決できないと思ったので、スマートニュースに移りました。

メディア企業からテック企業へと移り、いかがでしたか?

とても良かったと思っています。私がここに来たのは、情報とテクノロジーに関する本質的な問題を解決するためのツールとリソースを備えた場所で、コンテンツの観点から学び、自分の経験を分かち合いたいと思ったからです。コンテンツがすべての中心にあるメディア企業から、技術が中心にあるテック企業へ行くことは、エンジニアリングとプロダクトのMBAコースを受講するようなものでしたが、スマートニュースの皆が私が業界について知らないことを教えてくれました。そして生成AIが勢いに乗っている今、私たちが生きている間に見られるであろう、業界における最も大きな変革の瞬間にこの会社にいることができて、本当に幸せです。

スマートニュースでの現在の役割と日々の仕事について教えてください

私はコンテンツ&米国メディア・パートナーシップ担当副社長として、3つのチームを統括しています。

まず1つ目にコンテンツ・チームですが、メンバーはジャーナリストで構成されており、プロダクトやエンジニアリングのチームと連携して、アプリに良質な情報を掲載したり、ニュース速報が意味のある正確なプッシュ通知として人々に届くようにしています。多くの意味で、このチームはSmartNewsアプリにおける人間の良心のような機能を果たしています。

2つ目は、米国のメディア・パートナーシップ部門です。このチームはビジネス開発部門で、アプリにコンテンツを掲載しているパブリッシャーと契約を結び、アプリに掲載されるすべての情報に対する責任を負っています。

そして3つ目はメディア・ソリューション&オペレーション・チームで、ニュースフィードを含むバックエンドのすべてが正常に機能していることを保証しています。

ご自身の役割における課題は何ですか?

スマートニュースで私たち全員が直面しているのと同じ課題だと思います。どうすればユーザーが望み、必要とする情報を確実に送り届けることができるか。私たちは常にプロダクト・チームと協力し、アルゴリズムにどのように反映させればよいかを考えています。テクノロジーは急速に変化していますし、それに追いつくこともまた課題ではありますね。

スマートニュースが大切にしている「良質な情報」についてですが、私たち自身に内在するバイアスをどのように捉えるべきでしょうか?

まず、人間が関わるものはすべて主観的であることを認めなければなりませんね。ジャーナリストが毎日記事を書くために選ぶものは、引用する情報ソースから情報の順序付けに至るまで、全て主観的です。アルゴリズムやLLMはある瞬間にはバイアスを持っていないかもしれませんが、人間が作った情報を使って訓練されている以上、影響を受けているでしょう。

ですから、人間のジャーナリストが書く記事と同じように、私たちは注意してバイアスを探さなければなりません。構築モデルを注視し、そこに不要な主観が紛れ込んでいないかどうか疑問を持ち続けることです。私が考えるスマートニュースの良いところは、機械学習と人間の良心が組み合わさっているところです。

スマートニュースが働く場所としておすすめできる理由は何ですか?

大規模な企業でありながら、小規模な企業の良さを併せもっているからです。スマートニュースには十分なリソースがありますが、同時に良質な情報やAIといった新しくエキサイティングな領域について迅速に動けます。特にアメリカには、これらの条件をすべて満たせる職場はそう多くありません。エンジニアリング、プロダクト、コンテンツのいずれに携わる人にとってもまたとないチャンスであり、私たちが今取り組んでいる新しいプロダクトが市場に投入されれば、さらにその成果が目に見え始めると思います。

もうひとつ重要な点は、ここで出会う人の多くがミッションを重視していることです。もちろん誰もが自分の給料や肩書き、キャリアを気にしますが、ほとんどの社員たちは「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションとのつながりを感じてスマートニュースに来ているのだと思います。職場も含め、人生において完璧なものなどありません。しかし自分たちのやっていることの価値を本当に信じている、同じ志を持った多くの人たちと一緒にいられることも、ここに来る理由のひとつです。

Wendy Bounds participating in a Spartan Race

最後に、ご自身の著書『Not Too Late』について聞かせてください。この本では、障害物競走の世界選手権出場者になるまでの道のりを語っていただいています。この道に進んだきっかけは?

私はアスリートではありませんし、幼少期は痩せてガリガリで、どんなスポーツでも選抜選手に選ばれるようなことがない子どもでした。しかしある晩、ディナーパーティーで、年配の男性が若い女の子に「大きくなったら何になりたいか」と聞いているのを耳にしました。彼女の壮大な夢を聞いているうちに、40代の私にもう「何になりたいか」と尋ねる人はいないのだということ、そしてそれを自分自身に尋ねることさえやめていたことに気づきました。しかし、私がずっとなりたかったことの1つが、競技アスリートだったのです。そう気づいたら次から次へと物事が進み始め、翌朝Google検索から「スパルタンレース」と障害物競走にたどり着きました。それが何なのかまったく知りませんでしたが、調べれば調べるほどとんでもない話に思えてきました。そして、これは自分がやらなければならないことだと確信しました。

本の中では自分の経験について詳しく語っていますが、人生のどの時点でも『Not Too Late(遅すぎることはない)』ということ、そして新しく挑戦的なことに取り組む方法について、多くの科学者や医師、その他の専門家にインタビューもしています。一冊の本を書き上げるのはとても長い道のりでした。

※2024年8月15日時点の内容です。