和田 拓朗
Senior Software Engineer, Engagement Backend / Tokyo
Engineering

業務の抽象度や難易度があがることで、生み出す社会的なインパクトも大きくなる。それがやりがいとなる。

東京大学大学院情報学環・学際情報学府の修士課程を修了した後、和田さんはこれまでにAWS Japanのサミットで講演を行うなど、その高い専門性で内外に知られるソフトウェアエンジニアです。そうしたこれまでの歩みから、「エンジニアが活躍できるグローバルカンパニーで働きたい」という思いで2018年9月に入社したスマートニュースでのシニアエンジニアとしての働き方までお話を聞かせてもらいました。

どのようなきっかけでプログラミングに興味を持たれたんですか?

父がシステム関連の仕事をしていたことで、自分が小さい頃から家にコンピュータがありました。 それで遊んでいたゲームやそれらのゲームがどうやって動いているのかに興味を持ったことは、現在にも影響を与えているのかもしれません。まだディスプレイの表示が白黒の頃だったと思います。ただし「そこからプログラミングを始めました」みたいなよくあるストーリーにはならないんです(笑)。

ソフトウェアに興味は持ちつつも、自分のパソコンを持っていたわけでもなかったので、初めてプログラミングをしたのは大学に入ってからでした。プログラミングって大体最初はコードを書いて「Hello World」という文字を出すんですけど、その「Hello World」を見た時にすごい感動したんですよね。これは人に話してもあまり共感してもらえないんですけど(笑)。自分が書いたプログラムによってコンピューターを動かすことができたという経験を通じて、それまでに興味を持っていたゲームやソフトウェアは「きっとこの延長線上にあるんだろうな」と感じられたことが大きかったと思います。

大学ではどのようなことを主に学ばれていたんですか?

大学から大学院まで様々な授業や研究があったので一概には言えませんが、学科は電子情報工学科というところで、「コンピューターはどう動いているのか?」みたいなことも学べるところでした。そこで培ったコンピューターの知識やプログラミングの考え方というのは今も活きています。僕が所属していたのは画像処理に強い研究室で、僕自身は3Dディスプレイを作っており、自分で書いたプログラムで様々な画像処理をして、その3Dディスプレイに表示するというようなことをしていました。

大学院まで進まれ、研究者としての道も考えられたと思うのですが、そこで就職することを選んだ理由というのはどんなものだったんですか?

もちろん、ある分野の最先端を切り拓いていくことも、そうした研究をする研究者の方たちも社会にとって非常に重要ですが、僕の性格があまり研究に向いていないと感じていました。そのため、より社会に近い部分で技術を使って具体的な課題解決をするエンジニアとして就職することにしました。

入社する前の経歴について教えてください。

新卒は大手のSlerに入社し、そこで4年弱勤めました。もう少し小さい組織で自分で手を動かすような仕事がないかなと探しはじめた頃、ちょうど昔の先輩から起業した会社に誘ってもらえたということがきっかけとなり創業初期のスタートアップに転職しました。その会社で数年働いたあと、再び転職を考えるタイミングが訪れた時の軸が「エンジニアが活躍でき、かつグローバルビジネスに取り組んでいる会社」でした。ちょうど、スマートニュースで働いていた知人から「実はアメリカ版にも力を入れている」という話を聞き、「面白そうだな」と思ったことが直接のきっかけとなり、2018年9月からスマートニュースで働いています。

入社されてからはどんな業務を担当されているんですか?

入社前からアメリカ版のスマートニュースに興味があることを伝えていたので、入社直後はその開発に携わることが多かったです。アメリカでローカルニュースを配信する機能のテックリードをしたのが入社して最初の大きな仕事でした。例えば、ユーザーがニューヨークにいたらニューヨークのニュースを、サンフランシスコにいたらサンフランシスコのニュースを読めるようにするといった機能です。テックリードをしていたからといってもちろん僕一人で全部を考えたわけではなく、様々なエンジニアやプロダクトマネージャと話し合いながら一緒に形にしていきました。月並みな言い方にはなりますが、様々な優秀なメンバーがいたことでうまくいったと思います。現在はTechnical Foundation Pillarに属しながら、主にスマートニュース内のアカウント関連の機能開発を担当しています。具体的には、ユーザーにより高い利便性を提供するためにアカウントシステムの強化をしています。今すぐユーザー体験を向上させるものというよりかは、今後のスマートニュースにとって重要となるものであると考えています。

2020年にはAWS Japanのサミットに登壇もされたとお聞きしました。そこで発表された内容もそうしたスマートニュースの業務と関連するものだったんですか?

そうですね。スマートニュースは主に日本とアメリカでサービスを提供していますが、以前はサーバーが日本にしかなく、例えばニューヨークでユーザーがアプリを起動したとすると、そのリクエストは海を渡って日本に来て、また海を渡ってニューヨークへとレスポンスが返るのでどうしても遅くなっていました。それを速くするために「どのような設計をすれば良いか?」ということを発表しました。単純にアメリカにサーバーを構築するだけであればそんなに難しくはないんですが、アメリカのサーバーでリクエストを受け取るとしても、レスポンスを作るためのデータを日本から取得していたらあまり意味がないので、それをいかに効率良く効果的に設計できるのかを考える必要がありました。

その設計にAWSのどんなプロダクトを使っていたんですか?

具体的にはAmazon ElastiCache for Redis Global Datastoreというプロダクトを使いました。日本は東京、アメリカはヴァージニア、それぞれのデータセンターにあるRedisのデータをAWSが同期してくれるプロダクトです。このプロダクトを設計に組み込むことで、一部の機能ではアメリカ国内からのリクエストに対してはアメリカのサーバーから高速なレスポンスを返すことができるようになりました。時間としては1/3か1/4くらいにはなったと思います。

和田さんはマネージャーではなくIC (Individual Cotributor) としてのキャリアを進まれている理由を教えてもらえますか?

自分で手を動かしたかったというのが率直な理由です。以前に勤めていた会社ではEMのようなこともやってはいたのですが、それよりも新しい技術を自分で勉強し、それを実際のプロジェクトで使っていくことに興味がありました。スマートニュースでは、ICの中でもグレードが細かく分かれていることで、各グレードによってできること、期待されていること、それらの評価観点が明確にされていることは働きやすさにも繋がっていると感じます。こうした明確さは、2019年5月に入社したヨーリン・リー(VPoE)がより細かく分かりやすいものにしてくれたと思っています。ICの仕事で言うなら、シニアの人が設計したものを実装するといった役割から、自分で設計を考えるようになり、どうやってステークホルダーと要件定義をすれば良いのかを明らかにしていくなど、グレードに併せてより大きな課題が渡されることがやりがいになっています。

シニアICとして、今後はスマートニュースでどのようなキャリアパスを考えられていますか?

スマートニュースはまだ若い会社なのでシニアICの行き着く先にクリアなイメージを持っているわけではありません。ただし、自分の専門性やスキルを高めていくことで、取り組む業務の抽象度や難易度は上がるかもしれませんが、その分自分が生み出す社会的なインパクトも大きくなるだろうと考えています。

就職時に「より社会に近い部分で技術を使って課題解決をしたい」と思われていた和田さんにとって、スマートニュースでの仕事はそれを実感できるものですか?

そうですね。スマートニュースは日本でもよく使われているアプリなので分かりやすいというか、家族や身近な人に「こういう機能が入ったよ」と伝えると使ってくれますし、フィードバックをもらえたりもするので、そうした時に「みんなの生活にちょっとは貢献できているのかな」と感じられます。あとは(最近は自粛もありなかなか見かけることはありませんが)街中で使っている方を見かけるのも嬉しいですよ(笑)。

最後の質問です。入社して約3年だと思いますが、社内メンバーに共通する「らしさ」のようなものはあると思いますか?

あくまで僕個人の意見ですが、責任感を持って自走できる人が多いという印象を受けます。抽象的な粒度で伝えたことでも自分たちで何が必要なのかを考え、それをすごい高品質に形にしてくれます。あとはやっぱり「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションにみんな共感していると思います。このミッションの良いと感じるところは、ミッションを考えた時に「どんな社会貢献を実現できるか」をいろいろな形でイメージすることができるという点です。僕も「良質な情報とは?」みたいなことはよく考えますし、他のメンバーも多分考えているんじゃないでしょうか。

Books

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会社も家族も、その本質にはカルチャーがある

この本には、「自分の人生を良いものにするために、どのように物事を捉え考えていけばよいか」といったことが書かれていて、「本当に自分にとって意味があると思える事を仕事にしよう」とか「家族との時間を大事にしよう」といったような項目が事例とともにわかりやすく説明されています。特にその中でも「家庭内文化の重要性」に触れている部分が好きで、これを読んだことがきっかけで妻とも「自分たちのカルチャー」について定期的に話すようになりました。カルチャーって「集団内の構成員がどう行動するかの規範みたいなもの」だと考えていて、ベン・ホロウィッツの『Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』みたいに「会社のカルチャー」ついて書かれたものは以前にも目にしていたのですが、この本が教えてくれたのは会社も家族もカルチャーが大事という点では本質的に一緒だということでした。「子供にはこういう風に育って欲しい。だったらまずは家族としてこういうカルチャーを作っていかないとね」という。そういった大事なことに改めて気付かせてくれた一冊です。

『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』

編者:クレイトン・M・クリステンセン
出版社:翔泳社
出版年月:2012年12月

※2021.09.01時点の内容です