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キャリアは、個人の野心だけでは育たない。 東京Women's ERG「Give to Gain」で語られた迷いと自信

2026年5月、スマートニュースの従業員リソースグループ(ERG)「Women at SmartNews」が、パネルディスカッション「Give to Gain(与えることで得る)」の第2回セッションを開催しました。国際女性デーにインスピレーションを受けたこのシリーズに込められているのは、「自身の経験や疑問、得られた教訓をオープンに共有し合うことで、お互いを支え、励まし、それぞれのキャリアをエンパワーしていける機会を創り出そう」という想いです。
登壇したのは、Engineering、Marketing、Operations、Trust & Safety、そしてGlobal Language Solutions(通訳・翻訳)—— 部署も職種も、歩んできた国もバラバラなメンバーたち。それでも対話を重ねるうちに、ひとつの共通テーマがくっきりと浮かび上がってきました。
「スキルか、性別か」 迷いを打ち破る、Outcomeへの執着
パネルディスカッションでは、きれいごと抜きの率直な対話から始まりました。男性中心の職場環境での経験、インポスター症候群(※1)との向き合い方、ライフステージの変化への適応、そしてリーダーシップの責任を引き受ける決断を下した瞬間など。スピーカーたちは、それぞれのキャリアの節目で直面した課題を、飾らない言葉で語ってくれました。
※1 実力があって周囲から高く評価されているにもかかわらず、自分にはそのような能力はない、評価されるに値しないと自己を過小評価してしまう傾向のこと
なかでも会場の空気が変わったのは、女性の割合が少ないエンジニアリング環境で働いてきたスピーカーの告白です。ジェンダーバランスを改善しようとする外部の取り組みは、社会にとって間違いなく前進である一方で、当事者の心にはときに「私はスキルで選ばれたのか、それとも性別で選ばれたのか」という内なる迷いを生むことがある——。
その迷いを、彼女はどう乗り越えてきたのか。答えはシンプルでした。
「プロジェクトの成果や実証されたスキル、生み出した価値といった『客観的な事実』に立ち返ること」
時間をかけて一貫して成果(Outcome)を出し続ける。それが周囲からの信頼になり、やがて誰にも揺るがせない、自分自身の確固たる自信になっていく。スマートニュースのCore Valuesのひとつ「Outcome Obsession / 結果への執着」が、キャリアの迷いを打ち破る武器にもなり得るのだと気づかされる瞬間でした。
また、別のスピーカーは「平等(Equality)」と「公平(Equity)」の違いについて振り返りました。初期のキャリアにおいて、彼女は周りと完全に「平等」に扱われましたが、職場の構造自体が、個人の異なるニーズや状況を必ずしも考慮しているわけではありませんでした。このエピソードをきっかけに、全員を単に画一的に扱うことから一歩進み、多様な人々がそれぞれ成功できる環境をどのように整えるべきかという、より本質的な議論へと発展しました。
さらに、キャリアのステージによって課題がどのように変化していくかについても話し合われました。キャリアの初期には、自信の持ち方や組織への帰属意識、自身の声をいかに発していくかといった点が中心になりがちですが、ステージが進むにつれて、育児や柔軟な働き方、マネジメントへの挑戦、ワークライフバランスといった問いへとシフトしていきます。「いま自分がどのステージにいて、どんな問いと向き合っているのか」を言葉にできたこと自体が、参加者にとって大きな収穫だったようです。
完璧なメンターはいなくていい。「ロールモデルのパッチワーク」という考え方

ディスカッションにおける重要なメッセージのひとつは、「サポートネットワークの大切さ」でした。
ここで印象的だったのは、メンターシップの捉え方です。スピーカーたちが口を揃えたのは、「メンターシップとは、ひとりの完璧なロールモデルや形式的なメンターからのみ得られるものではない」ということ。キャリアの道標となるアドバイスは、マネージャー、同僚、かつての同僚、さらには遠くから観察しているだけの人物 —— あらゆる人々から得ることができるのです。
あるパネリストは、これを「ロールモデルのパッチワーク」と表現しました。完璧なひとりを探すのではなく、さまざまな人から異なる長所を少しずつ学び取り、継ぎ合わせて、自分自身の仕事やリーダーシップのアプローチを形づくっていく。「あの人の決断力、この人の傾聴力、あの人のユーモア」そう考えると、学びの機会は社内のあらゆるところに転がっています。
別のパネリストからは、こんな背中の押し方もありました。1対1のカジュアルな対話を求めて、ほかのメンバーに声をかける勇気を持ってほしい、と。
「私たちが想像している以上に、周囲の人は喜んで手を差し伸べてくれるものです」
声をかけられた側は、実は嬉しい。この感覚こそ、部署や職種の垣根を越えて助け合うスマートニュースのカルチャー「ひと事なんてない」の体現なのかもしれません。
さらに、マネージャーやチームが裁量を持たせ、主体的に学ぶ機会を提供することが、メンバーの成長をいかに後押しするかもハイライトされました。プロジェクトをリードし、意思決定を任される経験は、強い自信の源泉になる。同時に、さまざまなリーダーシップスタイルを間近で観察することは、「自分はどんなリーダーになりたいか(あるいは、なりたくないか)」を深く理解する手がかりにもなるのです。
心理的安全性と柔軟性が、成長のセーフティネットになる
ディスカッションのなかで特に際立っていたのは、「働く環境」がいかに重要かというテーマでした。
柔軟な働き方、ハイブリッドワーク、育児休業、心理的安全性、そしてオープンなコミュニケーション。これらの制度やカルチャーが、特に複数の責任を両立している社員や、大きなライフイベントの渦中にいる社員にとって、どれほど意味のある違いを生むか。スピーカーたちは実感を込めて語りました。
具体的に挙がったのは、フルフレックスなどの柔軟なワーキングスタイル、チーム内で相互にカバーし合えるドキュメンテーションの文化、そして部署の垣根を越えて気軽にアドバイスを求められる風土。制度が「ある」ことと、それを「気兼ねなく使える空気がある」ことは別物です。スマートニュースには後者があるからこそ、ライフステージが変わっても挑戦を諦めずにいられる。そんな声が印象的でした。
そして、Women's ERGそのものも、こうしたサポートシステムの一例として議論されました。日々の業務のなかだけではなかなか生まれない対話やアイデアの交換、メンバー同士のつながりを、ボトムアップで創り出す自発的なコミュニティ。誰かに指示されたからではなく、「この場が必要だ」と感じたメンバーたちが自ら動いて育ててきた場所です。
対話は、これからも続いていく
今回のイベントが改めて教えてくれたのは、キャリアの成長とは個人の野心(Ambition)だけで実現するものではない、ということです。コミュニティ、相互の学び、そして誰もが安心して質問し、オーナーシップを持ち、支え合える環境づくり。その積み重ねの先に、一人ひとりのキャリアジャーニーがある。
「Give to Gain」—— 与えることで、得る。自分の経験を差し出すことが、誰かの一歩を後押しし、巡り巡って自分自身の成長にもなる。この循環を、東京Women's ERGはこれからも紡いでいきます。社員がオープンに経験をわかち合い、互いに学び、よりインクルーシブで支え合える職場環境を実現するために。