Inside SmartNews
村上臣が初めて明かす「今のスマートニュース」を選んだ理由

ヤフー(現LINEヤフー株式会社、以下ヤフー)執行役員兼CMO、リンクトイン・ジャパン株式会社(以下LinkedIn)日本代表などを歴任し、『転職2.0』(SBクリエイティブ)の著者としても知られる村上臣さん(以下、Shinさん ※社内での愛称)が、2024年11月に新天地として選んだのはスマートニュースでした。
これまでの実績から多くのオファーや選択肢があったであろうShinさんは、なぜ「今のスマートニュース」を選んだのでしょうか。
その理由を聞くと、「今のスマートニュースだからこそできるかもしれないと思えることがある」とのこと。それは一体何なのでしょうか。現在はVice Presidentとしてプロダクト部門を牽引するShinさんの決断の背景、そしてスマートニュースにかける想いに迫ります。
なぜ村上臣はスマートニュースを選んだのか

─ 入社のタイミングとなった2024年11月ごろは何をされていましたか?
直近はグーグル合同会社(以下、Google)のゼネラルマネージャーで、日本の検索担当のプロダクト責任者でした。
─ スマートニュースのことはご存じだったと思いますが、どういう意思決定があって入社に至ったのでしょうか?
話としては長くなってしまうのですが、まずスマートニュースについては創業時から知っています。
僕自身はヤフーに戻ってきたタイミングで、執行役員CMO(Chief Mobile Officer)としてアプリ開発に力を注いでいました。Yahoo!ニュースのモバイル対応に試行錯誤しているうちに、アグリゲーションニュースメディアブームが起きて……ヤフーのモバイル責任者として、SmartNewsのアプリは研究しまくっていました。
一方で、共同創業者の鈴木健さん(取締役会長)や浜本階生さん(代表取締役社長CEO)とは昔から定期的に情報交換していましたし、LinkedIn時代もGoogle時代も、スマートニュースのオフィスにはしばしば来ていました。
シリコンバレーのキーマンが来日すると、よく「ローカルのスタートアップと話したい」と言うので、日本で技術力があり、かつ英語が通じる環境だとスマートニュース以外の選択肢はあまり浮かばなくて。階生さんに協力してもらって、ディスカッションの場を設けてもらっていました。
スマートニュースからアプローチをいただいたのは、LinkedIn時代と記憶しています。健さんが「もっとSmartNewsを良くしていきたいんだけど」と話をしてくれて、一緒に働くことも含めて真剣に議論をしたこともありました。
ただ、同じタイミングでGoogleからも「日本の検索をもう一度頑張りたいから力を貸してほしい」とオファーをいただいて。迷いに迷った結果、Googleを選択しました。

─ Googleではどのようなミッションを?
入社してすぐに、グローバル規模での組織再編の対応に追われたかと思ったら、すぐにOpenAIからChatGPTが出て社内に緊張が走って、Bard(現・Gemini)をつくることになって……と目まぐるしい毎日を過ごしていました。
Bardの日本語化やSGE(現・AI Overviews)日本語版の開発はやりがいがありました。ただ、自分のリソースのうち、ミッションに直接割けるのは3割程度で、残り7割は調整業務だったため、ある程度プロダクトアウトのタイミングで燃え尽きた感覚がありました。
ちょうどその頃スマートニュースも変革の時期だったので、健さんや階生さんと「元気ですか?」と連絡を取り合うように。すると「新しいリーダーシップ体制のもとで、次のフェーズに向けた取り組みを始めている。ぜひ一度、話をしてほしい」と言われました。実際に話をしてみると、会社が目指す方向性や課題意識に強く共感する部分が多く、「じゃあ、一緒にやりますか」と。僕にとってもベストなタイミングでした。
スマートニュースならできると思ったこと

─ 選択肢は多かったと思いますが、なぜスマートニュースを?
過去にやりたかったけどできなかったことが、スマートニュースならできそうな感覚があるからです。
─ と言いますと?
まず、欧米はローコンテクストな文化ですべてを言語化するのが比較的得意ですよね。だから、検索も能動的に言語化できた人にとって使いやすくなっている。例えば、Googleのトップページは、検索ボックスがど真ん中にレイアウトされたシンプルなデザインです。
一方、日本はハイコンテクストな文化です。行間や空気を読むことが得意で、レストランでも「今日のおすすめはこれです」「いい食材が入ってますよ」みたいな受動的な体験から始まる。だから、Googleのトップページを初めて見た多くの日本人は固まりましたよね(笑)。「え、このハコに何を入れたらいいの?」って。
でも、だからこそ、Yahoo! JAPANのトップページは生き残っているわけです。欧米ではポータルサイトはほぼ絶滅していますからね。
大きな転換点となったのは、ChatGPTの登場です。特に日本からのアクセス数は米国、インドに次いで世界3位。トラフィックシェアが伸びたのは、ChatGPTとやり取りする過程で自分の聞きたいことが明らかになっていったり、曖昧なまま質問しても受け止めてくれたり……という点が大きいと考えています。僕はより日本の文化にあったプロダクトを通じて新たな体験を提供したかった。
それが「スマートニュースならできるかもしれないと思えたこと」です。

─ 以前、別のインタビューで会社で働く理由のひとつとして、「企業のアセットを活用したい」とお話ししていたのが印象的でした。Shinさんが考えるスマートニュースのアセットとは?
グローバル企業であることです。日本だけよりも、海外のマーケットでも勝負できているほうがユーザーへのインパクトは大きい。
先ほどの日本や東アジアのハイコンテクストな文化として受動的な情報取得の話をしましたが、インターネット全体にも通じる話だと思っています。情報量が膨大で、しかもバイアスがかかっているからこそ、情報をきちんと届けていくことで、人々は理解を深め、人が本来持っている好奇心をスパークさせていくことができるはず。
好奇心の話なので、「日本だから」とか「アメリカだから」とか国や文化は関係ない。グローバルで戦うほうが成長のインパクトが大きくなる可能性があります。
─ SmartNewsが国や文化を越境していく、と。
TikTokの大流行が証明していますよね。TikTokこそまさに受動的な情報取得そのもので、国や文化を越境している。
だから、SmartNewsも「Global One Product」として、パブリッシャーとの信頼関係のもと、クオリティの高い良質な記事をいまのトレンドに合った形で架け橋をつくっていけば、日本でもUSでもユーザーに届けられるはず。
SmartNewsがGlobal Productとして大きなインパクトを出すことができれば、昨今のフェイクニュース問題を解決するきっかけにもなると考えています。
これからのスマートニュースに必要な人材

─ スマートニュースに入社して感じたことがあったら教えてください。
前提として、当時のIT企業はどこも“いろいろあった”んですよね。Googleも、Amazonもそうです。どの企業も同じ痛みを味わい、同じ教訓を得ています。
そのうえで今のスマートニュースにフォーカスすると、非常に筋肉質な組織だと感じています。「Global One Teamでつくっていく」というムードになってきているので、これからが楽しみですよ。僕を含め、JPとUSの両方への理解がある人間がリーダーシップになったことで、やりやすくなるでしょうし。
そもそも、日本発のスタートアップでグローバル組織を運営することができている会社は、なかなかないですね。人材や言語の多様性を含めて。
僕個人としては、いわゆる日本企業で働く自信はもうないのですが、スマートニュースのメンバーは話していても違和感がない。いい意味での“日本企業っぽくなさ”が強さであり、働く魅力です。プロダクトとしても、JPでの強さはありながら、USでも展開しているのは非常に珍しい。ビジネスとして10年以上続けていることにさらなるポテンシャルを感じます。
─ Shinさんが考える、これからのスマートニュースにフィットする人材とは?
PMも、デザイナーも、エンジニアも「Vibe Coding(バイブコーディング)」をできる人が優先になっていくでしょうね。
今の開発現場は「生成AIを使っていかに生産性を上げていくか」に向き合っていて、僕の直下のPM陣は自らVibe Codingをやる文化が醸成されつつあります。今まではPMがアイデアを出して、デザイナーとエンジニアが2週間ぐらいかけてプロトタイプをつくっていましたが、今は数時間ですからね。アイデアは「思いついた瞬間」よりも「いかに速く形にするか」に価値の源泉が移っています。
─ どういうことでしょうか?
どんなに優れたアイデアでも、世界を広く見渡せば5人以上は同じアイデアを持っています。違いが出るのは、スピードです。世の中にリリースしないことにはインパクトが出ないので、早くリリースしてフィードバックを得るスピードを速めるためにVibe Codingは欠かせません。
最近、全く別の仕事をしていた新卒3年目のメンバーが、社内の#koichi塾で学んで頭角を現して、1月から僕の直下でプロトタイパーとして働いてます。彼がPMとして独り立ちしたらおもしろそうですよね。

─ ありがとうございます。Shinさんの直近のテーマを教えてください。
あまり多くは語れないのですが、市場環境が変化していくなかで、SmartNewsもリフォームしていきます。記事を3つのポイントにまとめてわかりやすく届ける『スマニューAIまとめ』という機能もそのひとつ。
ただ、時短なだけではなく、好奇心を持つきっかけになるような体験を届けていきたい。僕自身が非常に多動なので、そういう喜びを提供していきたいですね。
─ 最後に、Shinさんにとって「良質な情報」とは?
「正しい情報であること」、「検証が可能であること」、「批評に耐える強度を持っていること」。逆の視点だと、生活で必要なものはすべて等しく情報です。雨音とか、日差しとかもそう。そう考えると、今のSmartNewsで送り届けられている情報はごくごく一部です。
僕は生活者として、必要な情報を全部持ってきてほしいタイプですが、スマホをもう使いたくないんです(笑)。AIによって、“スマホ以外の何か”を通じて情報が届けられるような世界は近づいてきているので、SmartNewsもアジャストしていきたい。SmartNewsの強みのひとつはパーソナライズエンジンだと思っているので、デバイスの形に関わらず進化できるはずですから。
─ スマートニュースで働くことにワクワクします。
本当に、おもしろいタイミングだと思います。
あと、数百名規模のスタートアップだと、ファウンダーCEOと話す機会はなかなかないのですが、階生さんはオフィスのその辺のカウンターとかで普通に作業していますからね。あれ、話しかけてOKの合図だと思うので、ぜひ話しかけてあげてください(笑)