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研究室を離れ、コンサル、そしてスマートニュースの日本広告事業責任者へ。コンプレックスを力に変えた異色のキャリアの軌跡

2026年04月21日

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スマートニュースの日本広告事業を牽引する、西出 拓。彼のキャリアは、京都大学大学院で遺伝子工学の研鑽を積んだのち、バイオベンチャーの研究職から始まるという異色の経歴でした。その後、コンサルティング業界に転身し、ボストン コンサルティング グループ(BCG)などで、数々の企業の変革をリードしてきました。

一見すると華やかなエリート街道を歩んできたように見えますが、その裏側には、自身のコンプレックスと向き合い、倒産危機の企業で泥臭く現場と向き合い続けた「不器用な挑戦」の歴史がありました。

なぜ彼は研究室を離れ、ビジネスの最前線へと向かったのでしょうか。そして今、事業責任者としてスマートニュースにどのような「熱狂」をもたらそうとしているのか。そのキャリアストーリーと、仕事への哲学に迫ります。



西出 拓(にしで たく)
執行役員 日本広告事業責任者 兼 社長室長 / Vice President of Japan Ad Business and CEO's Office
京都大学および同大学院生命科学研究科修了。バイオベンチャーでの研究職を経て、日系・米系コンサルティングファームや、ボストン コンサルティング グループ(BCG)に参画。BCGではプリンシパルとして企業変革プロジェクトを牽引。2022年7月、スマートニュース株式会社に入社。株式会社NTTドコモとの事業提携の推進 (SmartNews for docomo のローンチ等) や、日本の広告事業の戦略推進本部長として営業戦略やプロダクト販売戦略の立案・実行を担当。2025年6月より現職

キャリアのはじまりは、バイオベンチャーの研究職から

─ 本日はよろしくお願いいたします。まずは、スマートニュースに入社されるまでのご経歴について教えてください。

はい、よろしくお願いします。僕は大学・大学院と理系で、学部生の8割くらいがそのまま大学院に進学し、研究を究めるような環境でした。

─ まわりの方々も同じようなキャリアを歩まれるのが当たり前だったのですね。

ええ。そして例に漏れず大学院に進み、将来は製薬会社や食品会社などの研究職に就くのだろうと、自身のキャリアをぼんやり、かつ狭いスコープで捉えていました。ただ、僕が就職活動をしたのは、いわゆる「就職氷河期」の終盤で非常に厳しい時代だったんです。

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大手企業からはどこからも内定をもらえず(笑)、最初のキャリアは、ご縁のあったあるバイオベンチャーの研究職からスタートすることになりました。採用されてからの3年間は、ひたすら実験室にこもって実験ばかりしている毎日でしたね。

─ 今とは、まったく逆の環境ですね。

そうですね、今の自分を知っている方からは、よく意外だと言われます。ただ、2年目くらいからすこしずつ考え方が変わるきっかけがありました。ある研究室に派遣されたのですが、そこでの仕事は、企業の研究職でありながらまるで大学院の博士課程に進んだかのように、純粋に論文を書くための研究に近いものでした。そのときに「自分が進むべきはこの道ではないのかも……」と自分のキャリアに違和感を抱き始めたんです。

─ ご自身のやりたいこととのズレを感じ始めたということでしょうか。

はい、ビジネスに貢献する達成感を味わいたかった自分にとって、純粋な研究活動に対して意義を見いだせなかったんですよね。それに加え、当時、自分には大きなコンプレックスがありました。人と話すのが得意ではなく、人前に出るのがすごく苦手だったんです。だから、学生時代の自分からすると、いわゆる「営業」のような仕事は絶対にできないと思っていました。

ただ、そう思っていること自体が、実は「そういうことができるようになりたい」という気持ちの裏返しだったんですよね。

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─ コンプレックスは、裏を返せば憧れでもあると。

まさしくそうです。そのコンプレックスを乗り越えたいという気持ちもあって、コミュニケーションを学ぶセミナーに参加してみるなど、自分なりに試行錯誤をして色々なアクションを起こしました。すこしずつ自信がついてきたところで、研究者というキャリアそのものを変えてしまおうと、思いきって転職活動を開始したんです。

そのプロセスのなかで初めて「コンサルタント」という職業を知りました。企業の課題を紐解いて戦略を提案する、知的でコミュニケーションが中心になる仕事。それが純粋に「すごく格好いいな」と。本当にそんなピュアな動機でコンサルタントを目指し始め、NTTデータ経営研究所という日系のコンサルティングファームの門を叩きました。それが27歳くらいのことでしたね。

倒産寸前の企業再建で学んだ、現場の「人」と向き合うということ

─ コンサルタントに転身されてからは、どのようなお仕事を担当されたのですか?

NTTデータ経営研究所では、僕が理系だったこともあり、当時注目され始めていた「脳科学」を活用した新しいコンサルティングビジネスを開発する部署に配属されました。クライアントもいない状態から開拓し、コンサル1年生のときから提案書を書き、営業をやらせてもらいました。4年半ほど、がむしゃらに働きました。

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その後、コンサルタントとしてのキャリアをさらに追求したい、理系のテーマから離れてもっとビジネスサイドに振り切りたいと思い、30人規模の米系のコンサルティングファームに転職しました。

─ そこでは、よりビジネスの現場に近いお仕事を?

はい。そこでの仕事は、戦略コンサルというよりは……かなり泥臭いものでした。特に印象に残っているのは、PEファンド(プライベートエクイティファンド)が買収した企業の業績を立て直すプロジェクトです。企業再建はコンサルティングのなかでも最もヘビーな仕事のひとつと言われています。

─ 具体的にはどのようなプロジェクトを担当されたのでしょうか。

ある地方都市の中小企業を担当したときのことです。自分たちがチームで入ったときには、本当にギリギリの経営状態でした。

そこで僕たちコンサルタントは、どうすれば会社を立て直せるかを考え、戦略を立案しました。最初はそこまでの契約だったのですが、戦略の実行のためにチームから一人だけ残ってほしいとリクエストをいただき、中堅の自分が選ばれ、地方都市にある本社に常駐することになったんです。

─ そのファームからは西出さんお一人で、ですか。

ええ。最初は都内から通っていましたが、気がついたら近くにマンスリーマンションを借りて、週末だけ東京の自宅に帰るという生活になっていました(笑)。デジタルマーケティングで新規の見込み客を店舗に呼び込んだり、生産効率を改善したり、在庫状況を改善したりと、本当にありとあらゆることをやりました。

─ 社外から来たコンサルタントが、そこまで深く入り込むのは大変だったのではないですか。社員の方々との信頼関係はどのように築かれたのでしょうか?

経営陣からのプレッシャーは非常に厳しいものでしたが、本気でこの会社を良くしたいと思っていることは、現場のみなさん含めて誰しもが理解していました。僕の役割は経営と現場の間に立って、両者のコミュニケーションを円滑にするハブになることでした。

各拠点を回ってヒアリングをしたり、現場スタッフに「一緒にがんばりましょう」と鼓舞したり、一緒にビラ配りもしたり。

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そうやって泥臭く信頼関係を築いていくうちに、現場のマネージャーから「社員の〇〇くんが悩んでいて……」と直接個人的に相談の電話がかかってくるようになったんです。そこまで踏み込んで初めて、人は心を開いてくれるのだと痛感しましたね。気がつくと1年半近くもご支援させていただく形になりました。

─ コンプレックスを抱えていたとは思えないほど、人と深く関わるお仕事をされていたのですね。

そうですね。振り返ってみると、一つひとつのプロジェクトをやり遂げ、クライアントに喜んでいただく経験を重ねるなかで、自然と自信がつき、いつの間にかコンプレックスはなくなっていったのかもしれません。

BCGを経て、スマートニュースへ。

─ その後、西出さんのキャリアはどのように変化していったのでしょうか?

ご縁のあったBoston Consulting Group(以下、BCG)に入社しました。コンサルタントとしてのキャリアの総仕上げのつもりでしたね。ただ、入社して1〜2週間で「通勤時間がもったいない」と感じ、すぐにオフィスの徒歩圏内に引っ越しました。それだけ求められるアウトプットの基準が圧倒的に高い環境でした。

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上司は驚くほど頭の回転が速くて優秀な方ばかりで、役員クラスであるパートナー陣もプロジェクトの現場に深くコミットしてきます。週に何度もパートナーとの議論があり、クライアントの期待をはるかに超える価値を出すために、時間と知恵をフルに投入し続ける日々でした。

─ さぞかしハードな日々だったのだろうとお察しします……。

ええ。でも、そのおかげで本当に心身ともに鍛えられました。BCGでは37歳のときから約4年働きましたが、自分のなかで一定の達成感を感じることも多くなってきました。

その後、近い未来のライフイベントを見据えつつ、これまでの経験を事業会社で活かしながらサステナブルに働ける環境を求め、スマートニュースに転職をしました。

ビラ配りも、ランチの買い出しだってなんでもやりますよ。

─ 数ある事業会社のなかから、スマートニュースを選んだ決め手は何だったのでしょうか。

いくつか理由はありますが、ひとつは、自分がコンサルタントとして培ってきたことを活かしながら、ワークライフバランスも大事にサステナブルに仕事ができる環境だと感じたことです。

入社して感じたのは、とにかく「人が良い」ということです。成熟していて、人としてまっすぐな人が多い。誰かを出し抜こうとか、自分の手柄にしようと考える人が少なく、仕事に真摯に向き合う人ばかり。これは入社した時から今まで一貫して変わらない印象です。

─ コンサルティングファームから事業会社に来て、ギャップはありましたか?

あまり大きなギャップは感じませんでした。みんなが「プロジェクトを成功させるためにはどうすればいいか」という視点で協力してくれるカルチャーがあります。「なんで自分たちが協力しないといけないんだ」というような反応はこれまで一度もありませんでしたね。さらに、事業会社ならではの一体感と熱量を感じ、すごく良いなと思いました。

─ 入社当初はCEO's Officeの所属でしたよね?

はい。印象に残っているのは、当時のCEOの健さん(= 鈴木健 現 スマートニュース株式会社 取締役会長 )が「全部門のマネージャーと車座になって直接議論したい」と言って、僕がそのセッティングを担当した「ラウンドテーブルプロジェクト」ですね。超短期間での実施だったので、各部門との調整役として走り回り、当日は気軽にディスカッションできる空気をつくるために、ピザの手配などもしました。

あるお昼過ぎのラウンドテーブルの直前、健さんがランチをまだ食べていなかったんです。急いで会社近くのお店に買いに走りました。そうしたら後から健さんに「あのライスバーガー、めっちゃおいしかったよ」と褒めてもらえて(笑)。それが記憶にあるなかで健さんからはじめて褒めてもらえた出来事で、なんだかすごく嬉しかったのを覚えています。

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─ ほっこりするエピソードですね! ただ、ピザの手配やランチの買い出しといった業務に、抵抗はなかったのですか?

僕、そういうの全然大丈夫なんですよ。コンサル時代の企業再建でもそうでしたが、現場を動かし、組織を良くするためなら、ビラ配りでもピザの買い出しでも何でもやります。

経営トップと現場のコミュニケーションを円滑にするための潤滑油になれるなら、それも自分にとっては立派な「事業課題の解決」のひとつなんです。だから「なんで自分がそんなことを」なんて思ったことは一度もないですね。

たとえば今でも、自分の管轄組織のハッピーアワーとかで「西出さん、ビールを買い出しに行ってください!」と頼まれたら、喜んで行っちゃいますよ(笑)。

AI時代にこそ求められる、メンバー同士の「対面の熱狂」と次世代の営業

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SmartNews Ads Conference 2025 で日本広告事業責任者のバトンを受け継いだ西出さん

─ 広告事業のトップに就任され、現在は組織のマネジメントも担われています。コンサルタント時代のプロジェクトマネジメントとは何が違うと感じますか?

まったくの別物だと痛感しています。プロジェクトは目的や期限、役割が明確ですが、組織は必ずしもそうではありません。売上という会社の将来を左右するKPIに責任を持つ重みも違いますし、何より、メンバーひとり一人のキャリアや人生の一部をお預かりし、評価する立場になる。これは、自分のキャリアにおいてまったく新しいチャレンジで、非常に難易度が高く、やりがいがあります。

─ 最近では、広告事業部門で週3出社を基本とするRTO(Return to Office)を推進されています。これも大きな決断だったのではないでしょうか?

はい。もちろん様々な意見がありましたが、自分のなかには確信めいたものがありました。一言で言えば組織として「熱狂するため」です。チームが一丸となって目標に向かうとき、お互いの顔が見えていることは、ごく当たり前のことだと思うんです。

意見を戦わせ、良いことがあれば一緒に喜び、ときには冗談を言い合う。そうした人間的なつながりのなかから生まれる熱量こそが、組織を前進させる力になると信じています。リモートでは、決して生まれないものです。ビジネス上の効果ももちろん期待していますが、それ以上に、組織としてあるべき姿だと考えています。

─ 最後に、スマートニュースの広告営業として働く魅力と、求める人物像について教えてください。

AI時代において、メディアのあり方は再定義を迫られています。そのなかで「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションを掲げるスマートニュースが、どのような広告ビジネスを展開すべきか。これは非常に重要な問いです。

われわれとしては「広告もユーザーにとって価値のあるコンテンツのひとつである」という考え方をきちんと追求していきたい。それを実現できるのは、テクノロジーとメディアの力を持つスマートニュースだけだと自負しています。

また、セールスチームでは、AIを駆使して生産性を上げるためのツールを営業担当者自らが開発するなど、新しい時代の営業スタイルを追求することを後押ししています。
※[参考記事] 「無いものはつくる」。自作ツールやプロダクト共創でキャリアを拓く、スマートニュースの営業職

人間にしかできない、本質的な営業活動に集中するために、テクノロジーを最大限に活用する。そんな次世代の営業パーソンを目指せる環境が、ここにはあります。そんな次世代の「営業2.0」を体現したい方には最高の環境です。

前例のない課題や高い目標を前にしても、泥臭く問題と向き合い、ともに「熱狂」して楽しめる方とぜひ一緒に働きたいですね。

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企画 / 取材 = Talent Acquisition, Operations(小笠原)
文 / 編集 / 撮影 = Inside SmartNews編集部(花井)

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